「龍の子太郎」嘉穂劇場公演を観たみなさんも、嘉穂劇場を使って行われた歌舞伎ワークショップに参加したみなさんも、絵本を見ながらまたその時の感動を思い出してね!
嘉穂劇場は江戸歌舞伎の様式を備えた芝居小屋で、直径約16mの回り舞台と2本の花道を持っている。舞台には「せり」が、本花道には「すっぽん」があり、回り舞台も「せり」や「すっぽん」も全て人の手で動かすようになっている。それらの仕掛けを動かす人たちが働く空間が奈落だ。客席は畳敷き。桝席・桟敷席・大向う。広々とした空間だ。芝居の無事をお願いするお稲荷さんもある。
いつ行っても埃ひとつないほど磨き上げられ清潔で凛とした佇まい。さあ、あなたは嘉穂劇場へ行ってからこの絵本を見る?この絵本を見てから嘉穂劇場を訪れる?それともこの絵本を携えて嘉穂劇場へ行きますか?お近くでない人は「嘉穂劇場」で画像検索してみてね。
「絵本・夢の江戸歌舞伎」 服部幸雄:文 一ノ関圭:絵 (岩波書店) 江戸時代に生まれて発展し現代にもしっかりと生き続けている日本独特の伝統芸能・歌舞伎。華やかで美しくエネルギーに満ちた歌舞伎は出演者ばかりでなく観客も巻き込んだ「祭」そのものであり、その歌舞伎を上演する芝居小屋は神様を迎え楽しんでいただく場所でもあった。 この絵本では、
江戸三座(中村座・市村座・森田座)の中でも最も長い由緒と伝統を持つ中村座の様子を、狂言作者鶴屋南北の見習いとして入門した少年・千松の眼を通して語る形で描かれたものだ。芝居小屋の構造、顔見せ興行を打つ為に働く様々な人たちの様子、観客の度肝を抜く大掛かりな仕掛け、芝居の様子、客席を埋め尽くした人々の興奮などを余すことなく表していてとても興味深い。巻末の解説も丁寧でボリュームがあり、見開き2ページに繰り広げられる緻密な絵を見ながら解説を読むといっそう理解が深まっていく。